発行日 :平成12年 7月
発行NO:No4
発行    :溝上法律特許事務所
            弁護士・弁理士 溝上哲也
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   【3】論説〜消費者契約法について〜
(1)消費者契約法を知っていますか?

消費者契約法は、平成12年4月28日に成立しました(施行 平成13年4月1日)。
消費者契約法の立法背景は、規制緩和・撤廃の推進と影響の及ぶ消費者のためのシステムづくりとされています。
簡単にいえば、規制が緩和されると業者が強くなるから、弱い消費者を保護しようという理解です。
消費者契約法は、平成13年4月1日以後に締結された消費者契約についてのみ適用があります。なお、平成13年11月、商法改正に伴い、一部改訂(第7条第2項関係)がされましたが、平成13年4月1日以前か平成13年4月1日以後かは、消費者契約法の適用がされるかされないかという決定的な意味があることになりますので、以下、「施行」というときは、この平成13年4月1日施行のことを指して説明をします。

(2)消費者契約法の中身とは?

大きな柱は次のとおりです。
(1) 普通に生活すれば、大体適用されるものばかり。
消費者契約法の適用範囲は、消費者が事業者と締結した契約(消費者契約)を対象とします。消費者契約にあたる限り、適用除外はなく、全取引が対象となります。
「消費者」とは、消費者契約における事業者の相手方たる個人(自然人)である。
「事業者」とは、営利・非営利を問わず、一定の目的の下に同種の行為を反復・継続して行う事を業とする者をいいます。
要するに、私たちが普通に暮らしていく生活の中でのほとんどの買い物に適用されるということです。
(2) 「事業者」が重要事項の虚偽告知、断定的判断の提示、消費者に不利益な事実の不告知、不退去によるセールスをし、消費者がそれにより、「誤認」又は「困惑」すれば、契約を取り消せる。
消費者は、消費者契約を締結する際、事業者の行為によって、「誤認」したり「困惑」して消費者契約を締結をした場合に、消費者は、契約を取り消すことができます。細かいことは省きますが、要するに、消費者は、事業者から、@事実でないのに事実であると言われて誤認して契約をしたり、A絶対儲かると言われて誤認して契約したり、B不利な事実を敢えて隠されて誤認して契約をしたり、C家に来て帰ってくれと言っているのに帰らず困惑し契約をした場合は取り消すことができます。
(3) 不当条項は、無効である。
無効とすべき契約条項が列挙されています。
例えば、「怪我をされた場合、如何なる理由があっても一切賠償を致しません」とか「消費者の事由で解約された場合、一切返金は致しません。」などは、すべて不当条項にあたり無効となると考えられています。
また、「民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。」と規定されており、消費者の利益を一方的に害する条項は無効となります。

(3)消費者契約法ができたことでなにが変わるのか

消費者契約法は、平成13年4月1日以後に締結された消費者契約について適用されます。消費者契約の範囲は広く、消費者及び事業者は、次のことをよく考える必要があるでしょう。

(1)消費者としての立場から
消費者契約法は、消費者を保護する法律ですが、契約自由の原則を全面的に修正したものではありません。また、消費者の弱みに付け込む悪質業者を全て排除することはできないと思われます。
したがって、消費者契約法があるからといって、安易に判を押すことは絶対に避けなければなりません。
消費者契約法は、全ての「事業者」に適用されるといっても、普段の生活においては、気にならない場合が多いと思います。
なぜなら、いったん買ったものを気に入らないからといって返品するといえば、普通お店の方も返品に応じてくれるからです。
ただ、この返品もお店が応じてくれるからできるのであって、法律的には、お店は、全く応じる必要はないのです。
すると、一般消費者が消費者契約法にお世話になる場合とは、高額な商品がやはり多くなるのではないでしょうか。
高額な商品ほど(事業者が悪質でなくても)返品はできなくなる可能性が高くなります。当然ですよね。事業者の立場からすれば、高額な商品ほど他に売りにくくなるから、いったん売ったものを返品には応じたくはなくなりますから。しかし、司法の立場からみれば、判を押された書類にけちをつける(無効といったり、取り消したりすること)ことは、とても難しいことです。本来、小学校や中学校で、判こを押すことの重要性をもっと教えるべきものと思いますが、なかなかそこまで及んでいません。
消費者として重要なことは、いつも一人で判断しないこと。そして、面倒がらずに説明をよく聞くことが必要です。消費者契約法には、「ただし、当該事業者が当該消費者に対し当該事実を告げようとしたにもかかわらず、当該消費者がこれを拒んだときは、この限りでない。」という条項もあります。高い買い物をするときには、誰かに相談し、疑問が生じれば専門家に相談する等いっそうの自己防衛が必要でしょう。

(2)事業者としての立場から
上記のように書くと、「事業者」の立場からすれば、自分のところは悪質業者でないし、結局、消費者に十分説明して契約を締結すればいいのか。と思われてしまうかもしれませんが、それも、正しいとはいえません。特に、法律的な効力規定がある消費者契約法が成立・施行され、消費者保護の立場が明確にされたことで、司法の判断においても消費者保護の立場をより鮮明にする判断が少なくとも今よりは、多くなると思われます。

消費者契約法施行(平成13年4月1日)後の現在でも、細かな約款や契約条項をよくみると、消費者契約法に照らせば、不当条項として無効となりうる条項を見かけます。特に不当条項に関して、「民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効」とならないか、消費者保護の立場からみて妥当な条項かどうか、ときには弁護士等専門家を交えた吟味が必要でしょう。 今の段階で、細かな約款や契約条項をよくみると、消費者契約法に照らせば、不当条項として無効となりうる条項を見かけます。特に不当条項に関して、「民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効」とならないか、消費者保護の立場からみて妥当な条項かどうか、時には弁護士等専門家を交えた吟味が必要でしょう。

PL法の場合、「欠陥」が問題になります。法律的な判断も必要ですが、「欠陥」は、技術的判断や社会的判断がより必要と思われます。しかしながら、消費者契約法において「不当」とは、より法律的判断が重視されるべきものともいえます。円滑円満な取引は、裁判所が結果的に「不当」と認めなければよいというのでは、成り立ちません。たえず「不当」とならないか絶え間なく事前に検討すべきという予防法学的な視点が必要となります。

日本の契約書には、なにかトラブルが起こったときの条項が小さく書かれたり、または全く書かなかったりしているのをよく見かけます。それは、契約をするのに縁起が悪いことを書きたくないという日本人の特質なのかもしれません。
契約書は、トラブルが起こったときにトラブルを最小限に留める予防策です。堂々と書いて、消費者になにか言われたときには堂々と説明をし、理解を求めることが重要です。それが消費者契約法に照らして妥当でない条項ならば、堂々と説明できないわけです。このような訓練は一朝一夕ではできません。そもそも自分のところの商品をうまく説明できない営業の方も見受けられます。

よく見受けられる例として、

「****が欲しいのですが?」と言われと
「はい、こことこことここに判を押して。」と言い、
「はい、こことこことここね。」と判こを押す

という会話があります。
消費者契約法は、少なくとも事業者については、説明したいという動機付がなされるきっかけとなるでしょう。

(4)消費者契約法全文

最後に、別紙に消費者契約法の全文を掲載します。そんなに長い法律ではありませんから、意識しておくというのもいいかもしれません。

(H12.7作成 H16.4.1修正:弁護士 岩原義則)


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