発行日 :平成16年 7月
発行NO:No13
発行    :溝上法律特許事務所
            弁護士・弁理士 溝上哲也
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   【1】論説 〜弁護士会報酬規定の廃止〜

    弁護士が事件等の委任を受けた場合の報酬の基準については、平成16年3月31日までは、日本弁護士連合会の定めた報酬等基準規程(平成7年9月11日会規第38号)に基づいて、各地の弁護士会が所在地域における経済事情その他の地域の特性を考慮して定めた「報酬規定」がありました。弁護士は、事件の依頼を受けるときには、所属弁護士会の「報酬規定」を依頼者に示し、例えば、民事事件であれば、定められた標準額の上下3割までの増減の範囲内の金額を請求していました。このような弁護士報酬の決め方は、依頼者にとってみれば、標準額の3割増以上の金額を請求されないという安心感があり、依頼を受ける弁護士にとっても、説明の困難な無形のサービスに対する対価を第三者である弁護士会が根拠づけてくれるという点で便宜でした。
    ところが、政府は、弁護士をはじめとする業務独占資格について、競争の活性化を通じたサービス内容の向上、価格の低廉化、国民生活の利便を図るために、平成13年3月に「規制改革推進3カ年計画」を閣議決定し、その中で、試験合格者数の見直しとともに、「資格者間の競争の活性化の観点から、資格者団体の会則において報酬規程を設けることを廃止する。」との方針を発表しました。この方針を受けて、平成15年の通常国会で、「弁護士の報酬に関する標準を示す規定」を弁護士会の会則で規定するとしていた弁護士法33条について、これを会則事項から削除する改正がなされました。その結果、日本弁護士連合会においても、同年11月12日の臨時総会で従来の報酬等基準規程を平成16年4月1日から廃止することが決議され、さらに同年2月26日の臨時総会決議により、新しい「弁護士の報酬に関する規程」(会規第68号)が制定されました。
    それに伴い、平成16年4月1日以降は、それぞれの弁護士・法律事務所が、各自の報酬規定を作成して事務所に備え置くことが義務づけられ、依頼者との合意によって、従来の方法にとらわれずに報酬の額や形態を自由に決めることができるようになりました。例えば、今後は、着手金や報酬の上限はなくなりますし、着手金無料で、成功報酬が50%という報酬契約や年俸制の報酬契約も可能となります。

    この度の弁護士会報酬規定の廃止は、われわれ弁護士にとっては、司法試験合格者の500名程度から3000名程度への大幅増員、業務広告の原則解禁に続く大変革であり、依頼者に評価されれば、高額の報酬を請求できる反面、価格競争の激化によるサービス内容の低下が懸念されます。新しい「弁護士の報酬に関する規程」によって、弁護士の報酬は、経済的利益、事案の難易、時間及び労力その他の事情に照らして適正かつ妥当なものでなければならないとされていますが、いずれにしても弁護士にとって、提供する法的サービスの内容についてより具体的な説明を行うとともに、その対価が合理的なものであることについて依頼者の十分な理解を得ることが求められています。
    弁護士会報酬規程の廃止後における各事務所の対応は、大部分が全く新しい報酬基準を作成するのではなく、従来の報酬基準をそのまま踏襲するというのが実情ですが、今後、新しい基準を作成して適用していこうとする事務所が増えてくるものと予想されます。当事務所では、弁護士業務に対して適用する報酬の基準として、大阪弁護士会の定めていた従前の弁護士報酬規定を実情等に則して一部修正し、平成16年4月1日から溝上法律特許事務所弁護士報酬規定として、新たに制定しています。また、当事務所のホームページにおいても、新たにその概要を表示して、情報公開に努めていますが、今後、当事務所の報酬基準が多様化する弁護士報酬の一つの選択肢として位置づけられ、依頼者に分かりやすい納得のいくものとなるよう努めたいと思っています。

以 上

(H16.7作成: 弁護士 溝上哲也)


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