発行日 :平成30年 1月
発行NO:No40
発行    :溝上法律特許事務所
            弁護士・弁理士 溝上哲也
→事務所報 No40 INDEXへ戻る


   【3】交通事故に遭った場合の初期対応について〜
1、はじめに
  日常生活を送っている中で、突然直面しうるのが交通事故です。加害者側としても被害者側としても不幸にも交通事故に遭遇した場合に、事後的に弁護士等の第三者に相談すれば対応可能な点については、本稿での言及はしないこととし、そういったアドバイスを受ける以前の事故直後の対応について、実際の事故態様とは異なる事実認定がなされて後悔するということがないように、事故直後にとるべき対応・注意点について、本稿で言及したいと思います。

2、警察による事故現場の実況見分について
  人身事故であれ、物損事故であれ、交通事故においては、警察への通報が義務付けられているため、警察官による事故現場の実況見分が実施され、人身事故では実況見分調書、物損事故では物件事故報告書が作成されます。
  この点、人身事故の場合には、その後刑事事件となる可能性も踏まえ、警察は両当事者・目撃者等から聴取を行うと共に、事故態様についての図面が作成されることになります。ですから、自身の記憶に基づき、正確に聴取記録を残してもらうと共に、事故態様についての図面の記載に間違いがないかどうかもきちんと確認することが大切です。事故直後に警察により作成された書面であるということから、一般的に信用性が高いと判断されることが多いため、ここで如何に正確な記録を残してもらうかが肝要です。
  とはいえ、相手方の説明と自身の説明が異なることもよくありますし、物損事故の場合には、図面すら作成されないこともありますので、後述の通り、自身で事故状況の情報収集をしておく必要も存します。

3、情報収集について
  事故直後に事故状況の情報収集として重要な行動としては、事故現場での写真・ビデオ撮影や目撃者との接触が考えられます。
  まず、事故現場での写真撮影・ビデオ撮影についてですが、スマートフォン等で撮影されることが多いと考えられますので、その場合には、撮影日時・場所・撮影者は明らかであると言えますが、撮影地点についてもきちんと記録しておくことが大切です。また、撮影対象としては、事故現場に存する事故の痕跡(スリップ痕、道路施設の破損、自動車・自転車等の破損状況)はもちろんのこと、規制標識や道路の状況(路面状況、路肩の有無、色、天候等)も記録しておくのが大切です。特にビデオ記録であれば、事故現場の視認状況(明るさ、見通し状況等)を明確に記録できると言えます。
  次に、目撃者との接触についてですが、事故の目撃者がいると考えられる場合には、目撃状況(どの位置から目撃したか等)や目撃内容を聴取し記録し、目撃者の氏名・連絡先などを取得しておくことが考えられます。第三者の事故直後の目撃供述であればその信用性は高いものと考えられますから、目撃者が協力してくれる場合には行うメリットは大きいものと言えます。
  なお、事故後に自己の相手方から、100%の責任を認める文書を取得したり、謝罪文を取得しているケースがありますが、こういった書面の意義はそれほど大きいものとは言えません。取得するのであれば、脇見運転をしていましたであるとか、ブレーキを踏みませんでしたといった、一定の具体的事実を認める文書を作成してもらうべきです。こういった文書であれば有用性が認められる可能性は高いものといえます。
  また、近年はドライブレコーダーを設置されている方も多いですので、ドライブレコーダーによる記録も当然有力な証拠となります。ですが、アングル上、重要な事実がドライブレコーターに記録されていない可能性等も考えられますので、前記までの対応も、念の為、合わせて取られるのが無難であると言えます。

4、事故による負傷が存する場合
  事故により負傷し、病院で治療を受ける場合には、後に事故との因果関係が否定されて賠償を受けられなくなる危険が存するため、診断書に単に傷病名のみ記載してもらうのではなく、症状や原因等について具体的な記載をしてもらうように求めるのが重要です。また、受傷直後よりも時間経過後に症状が重篤化するというケースもありますので、違和感や痛みが存する場合には、自己の判断で軽く捉えることなく、きちんと医師に申し出て、診てもらっておくことも大切です。特に他覚的所見は自覚的所見よりも重要視される傾向にありますので、レントゲンやMRI検査等の客観的評価を早期に残しておくべきです(通常、治療に必要ですので、こちらから申し出なくとも医師により実施されるものと言えますが)。
5、初期対応の重要性について
  前記以外にも、相手方の身元確認や保険会社への通知等も初期対応として行 う必要があります。初期対応については、予測不能で、突如身に降りかかった事故直後に行う必要があるため、弁護士等の専門家のアドバイスを受けながら行うことが難しいことも多い一方で、前記のような点を頭に入れて行動するのと、しないのとでは、後に紛争となった場合に大きな差となることが多く見受けられます。ですから、日頃から前記のような点に留意されておくのが肝要です。それでも、実際に事故が起こった時に、相手方の対応等から、事故態様が正確に記録されないのではないかといった不安を覚えられる場合等には、事故後すぐに弁護士に相談される等し、対応されるのが望ましいと思います。

以 上

(H29.12作成: 弁護士 河原 秀樹)


→【1】論説:終活のための遺言書について〜
→【2】論説:近年の商標の判例について(その2)〜
→【4】記事のコーナー:PCT規則の改正について〜
→【5】記事のコーナー:事務所へのアクセスについて〜
→事務所報 No40 INDEXへ戻る



溝上法律特許事務所へのお問い合わせはこちらから


HOME | ごあいさつ | 事務所案内 | 取扱業務と報酬 | 法律相談のご案内 | 顧問契約のご案内 | 法律関連情報 | 特許関連情報 | 商標関連情報 |
商標登録・調査サポートサービス | 事務所報 | 人材募集 | リンク集 | 個人情報保護方針 | サイトマップ | English site
1997.8.10 COPYRIGHT Mizogami & Co.

〒550-0004 大阪市西区靱本町1-10-4 本町井出ビル2F
TEL:06-6441-0391 FAX:06-6443-0386
お問い合わせはこちらからどうぞ