■商標制度 
1.商標制度 
 商品を購入したりサービス(役務)を受けるとき、個々の商品やサービスの中身を確かめなくてもその商品やサービスに付随してネーミングやマークが表示されていると、これを目安に中身を判断することができます。このネーミングやマークが「商標」であり、商標法は、業として商品又は役務の生産、証明、譲渡、提供を行っている者が、その商品又は役務について使用する文字、図形、記号、立体的形状もしくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合よりなるものを「商標」と定義しています(商標法2条1項)。  この商標は営業上の信用が形を変えたもので、商標なしには広告・宣伝による商品等の販売形態は成り立たないものです。例えば、A社のマークが付された商品であるから購入したのに、中身はB社による商品であったとしたら、需要者の利益は著しく害されますが、よく新聞等で見られる「偽ブランド商品」がこれに当たります。  商標制度は、このような事態を避けるため、市場等において多数取引される商品・サービス群の中から自己の商品・サービスを他人のものと識別するための標識として用いられる「商標」を独占権として保護することにより、商品・サービスの混同が発生するのを防止して自由競争の秩序を維持し、商標使用者の業務上の信用の維持を図ろうとするものです。そして、これによって需要者の利益を保護するという公共的な役割を担っています。  なお、商標はその態様により、実務上次の如き種類があるとされています。 文字商標=アスピリン、SUNTORY、味の素 図形商標=エンゼルマーク、三菱の図形 記号商標=イゲタ、ヒシ、キッコウ 結合商標=文字、図形、記号の二つ以上が結合したもの
2.商標権取得の流れと効力 
 商標登録を受けようとする者は、商標見本又は標準文字で登録を受けようとする商標を表示 した上で、45分類ある商品及び役務の区分と指定商品又は役務を記載した願書を特許庁長官 に提出することが必要です(商標法5条)。審査の結果、登録が認められた商標権については 、商標公報によってその内容が公開されています(商標法18条3項)。権利の存続期間は登録の 日より10年間ですが、この期間は更新登録の申請により、更新できます(商標法19条)。 なお、商標の出願から権利の消滅までの流れは、別表( 商標権取得の流れ図)に記載するとおりです。  商標権の効力は、商標権者が指定商品又は指定役務について登録商標を自ら又は他人をして 独占的に使用できることにあります(商標法25条)。そして、この効力は、他人の登録や使 用を類似範囲において排除するところにまで及びます(商標法4条1項11号、37条1号) 。商標権を侵害した者は、刑事上、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処せられ(商 標法78条)、民事上は、侵害行為の停止、損害賠償を請求されることになります(商標法3 6条、民法709条)。商標権を侵害をした者については、過失が推定されますので(商標法39条 、特許法103条)、登録されていることを知らなかったとしても、損害賠償をのがれること はできません。商標法は、損害の額についても推定規定を置いているので(商標法38条)、 ひとたび侵害となった場合には、その企画商品で得た利益を超える出費を余儀なくされる虞れ があるため、注意が必要です。  なお、商標の類似とは、a.外観類似、b.称呼(発音)類似、c.観念(意味)類似の何れかに 該当する場合を言いますが、商標が類似であっても、使用する商品又は役務が同じか類似する ものでなければ、商標侵害にはなりません。
3.商標と他の知的財産権との違い
(1)商標と商号の違い
商号は商人が自己の営業を表示するために使用する名称であって、同一人については1ケしか存在しませんが、商標は商品によって幾つも選定して使用できます。商号は、商法によって保護されていますが、登録商標が国内全域について独占権を認められるのに対し、原則として同一市町村内における同一の商号の登記を禁ずるのにすぎません。
(2)商標と意匠の違い
商標のうち、図形商標や立体商標は、いずれも図形や立体的形状を客体とする点で意匠と共通する部分があります。しかし、意匠は、視覚を通じて美感を起こさせる物品の形状等の創作を保護対象とするのに対し、図形商標や立体商標は、出所表示機能を有するマークや立体的形状を商標としての保護対象にする点で相違しています。
(3)商標と不正競争防止法上の権利との違い
 商標権と不正競争防止法上の権利は、どちらも事業者の経済活動に伴って保護すべき権利として規定されている点では共通していますが、商標権が出願して特許庁で登録されなければ発生せず、同一または類似する指定商品(役務)の範囲内でしか権利行使が認められないのに対し、不正競争防止法上の権利は登録が権利保護の要件とはされておらず、類型によっては、権利者がおよそ事業活動をしていない分野での権利行使まで認められる点が相違しています。