発行日 :平成16年 7月
発行NO:No13
発行    :溝上法律特許事務所
            弁護士・弁理士 溝上哲也
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   【3】記事のコーナー:〜意匠について〜
1 意匠とは何か

意匠法第1条には、「この法律は、意匠の保護及び利用を図ることにより、意匠の創作を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。」とあります。意匠法は、美感の面からアイデアを把握してこれを保護しようとしています。そして、こうした保護するに価するすぐれた意匠が、どのように産業の発達に寄与するかというと、例えばすぐれた意匠を商品に応用することによって需要が増加して産業の興隆が実現されるといった場合、あるいはすぐれた意匠が同時に技術的に優れている場合もあって技術の進歩、ひいては産業の発達が意匠そのものによって直接に実現される場合、などがあります。
 意匠法で保護される意匠とは「物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせる」ものをいいます(意匠法第2条)。

2 意匠権取得の手続について

意匠権を取得するための手続は 別表 のとおりです。意匠出願(01)をすると、審査請求を別にしなくても方式審査(02)と実体審査(03)がなされ、審査をパスしたものが登録査定(04)となります。その後、登録料を納付する設定登録(05)の手続が行われ、意匠公報が発行(06)されます(ただし、秘密とされている場合は所定期間発行されません)。意匠権の権利の存続期間は登録の日(05)より15年間であり、この期間は更新できません。
審査(03)のときに拒絶の理由があると判断されたときは拒絶理由通知(07)が発送され、この拒絶理由通知に対応できる期間に何らの対応をせずに放置しておくと拒絶査定(08)になります。また、拒絶理由通知に対応できる期間に意見書や補正書を提出(09)することで、拒絶の理由が解消されれば登録査定(04)となり、拒絶の理由が解消されなければ拒絶査定(08)となります。
拒絶査定(08)となった後には、その査定の謄本の送達日より30日以内であれば拒絶査定不服審判(10)を請求することができます。この拒絶査定不服審判の審理(11)において、拒絶査定の理由が覆れば登録審決(12)となって登録査定(04)となり、拒絶査定の理由が覆らなければ拒絶審決(13)となります。
さらに、意匠権は、無効審判(14)を請求したり、請求されたりします。無効審判の審理(15)で、その請求が認められない場合は維持審決(16)が、その請求が認められた場合は無効審決(17)がなされ、これらの審決(16)(17)に不服な場合、あるいは、前記拒絶査定不服審判(10)における拒絶審決(13)に不服な場合は東京高等裁判所(18)で、さらに東京高等裁判所での判決に不服な場合は最高裁判所(19)で争うことができます。
なお、意匠制度には、出願(01)から登録(04)までの間に、特許制度のような審査請求、出願公開、の制度がありません。

3 意匠の種類について

 意匠の出願の形態は次の4つがあります。
  1.物品全体の意匠(通常の意匠出願)
  2.物品の部分的な意匠(部分意匠)
  3.統一性のある2種以上の物品全体の意匠(組物の意匠)
  4.相互に類似する意匠(関連意匠)
※5.一定期間だけ秘密にする意匠(秘密意匠)

出願形態
特徴
通常出願 形状が特定できかつ肉眼で確認できる有体物である動産であると共に量産可能である「物品」を経済産業省令で定める区分に分けて意匠ごとに行う(1意匠1出願の原則:以下の全ての出願形態に適用されます)通常の出願の形態です。
部分意匠 物品において最も特徴的なある一部分について意匠登録を受けようとするものです。部分意匠について登録された場合であってもその一部分についての意匠権が全ての物品の一部分におよぶのではなく、例えば、冷蔵庫の取っ手の部分意匠の意匠権は、玄関ドアの取っ手にはおよばないといったように、全体が属する物品において部分的な意匠権がおよぶというものです。
組物の意匠 同時に使用される2以上の物品であって(経済産業省令で定める)組物を構成する物品について全体として統一がある場合は、それら物品全体を組物の意匠として1物品とするものです。組物の意匠について登録された場合は、組物を構成する個々の物品の類似品が存在したとしてもその類似品には組物の意匠権はおよばず、組物全体としての類否で判断します。
関連意匠 自己の元となる上記1〜3の意匠(本意匠)について、本意匠と同日の出願日に、相互に類似する意匠を関連意匠出願として出願することで、本意匠と類似関係にある自己の意匠を保護するというものです。つまり、@自己の、A本意匠と類似し、B本意匠と同日の出願であるならば、関連意匠として出願が可能で、審査においては自己の(本)意匠に類似するという理由での拒絶は受けません。この関連意匠の意匠権は、本意匠の類似の範囲と重なる範囲におよぶことはもちろんのこと、本意匠の類似の範囲を越えた関連意匠の意匠権の類似の範囲におよびます。
※秘密意匠 出願の形態ではありませんが、出願と同時にその旨の請求を行えば、意匠権の設定登録の日から3年以内の期間を指定して意匠を秘密にすることができるというものです。通常は、上記表のように登録された後には意匠公報が発行されますが、この請求をして認められ、かつ秘密にする出願が登録になった場合には登録から最長3年間秘密にしておくことができます。

4 意匠の登録要件について

上述した各意匠については、それぞれ出願の形態こそ異なりますが、登録されるには方式上の要件のみならず、実体審査上の以下の要件を備えている必要があります。
  1).工業上利用できるものであるか
  2).新規性を有するものであるか
  3).創作性を有するものであるか
  4).登録された先の意匠の一部と同一又は類似であるか
  上記1)については、冒頭で説明したとおり、意匠法の目的や意匠という定義にかなっていない、つまり何ら工業上利用価値のないものについては保護しないというものです。ただし利用価値がないとは、機能的に劣っているという点を言うのではなく、意匠としての観点から言っています。
  上記2)については、例えば公知の意匠と同一の意匠を出願しても登録されないという趣旨です。   上記3)については、例えば公知の意匠とは同一ではないが、公知の意匠から(当業者が)容易に創作できたとか物品の構成上不可欠な形状が付加されているだけなどといった程度で類似している場合は創作性を欠くから登録されないという趣旨です。   上記4)については、部分意匠との関係で設けられたもので、つまり、先に登録された部分意匠が存在するときは、後願となる意匠出願は、前記先の登録された部分意匠のその部分と同一又は類似である場合は登録されないという趣旨です。

5 意匠権の効力について

意匠権の効力は、その物品において類似範囲におよびます。類似範囲とは、例えばその物品における複数の登録例を比較して「最も特徴となる形状についてどの程度、形状に差があるか」を判断することで検討することができます。
  意匠権は、独占的効力と、排他的効力があります。
  独占的効力は、業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有することです。
  意匠の実施とは、意匠に係る物品を製造し、使用し、譲渡し、貸し渡し、若しくは輸入し、又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む)をする行為です。
  排他的効力は、意匠権者の独占的実施を侵害したり侵害するおそれのあるときは、その者に対し、侵害の停止や予防を請求できることです。なお、登録意匠又はこれに類似する意匠に係る物品の製造にのみ使用する物を、業として製造・販売するような行為は、直接意匠権を侵害するものではありませんが、間接侵害として意匠権を侵害するものとみなされます。
  侵害の停止又は予防の請求の具体的な内容としては、損害賠償請求、不当利得返還請求、信用回復の措置の請求などのほかに、侵害の行為を組成した物の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却、その他侵害の予防に必要な行為を請求することができます。

  意匠権の効力は、公益的事由がある場合、他人の権利と利用・抵触関係がある場合、再審により回復した場合、などのときに制限を受けます。
  公益的事由で制限を受ける場合とは、試験や研究のためにする登録意匠の実施、単に日本国内を通過するに過ぎない船舶又は航空機、これらに使用する機械、器具、装置、その他の物、意匠出願の時から日本国内にある物には、その意匠権の効力がおよばないことを意味します。
  他人の権利と利用・抵触関係がある場合とは、意匠権、特許権、実用新案権、商標権、著作権、など他人の権利の客体を利用するとき又は先願の他人の権利と抵触するときには、その意匠権の効力について制限を受けることを意味します。   再審により回復した場合とは、意匠権の無効審判において所定の再審理由が発見されて再審が行われ、再審の結果、一旦は無効審判において無効となった意匠権が再審で回復したとき、無効審決確定後から再審の請求の登録前において、善意でその登録意匠又は類似する意匠の実施していた者には意匠権がおよばないことを意味します。


(H16.6作成: 特許商標部 竹内 幹晴)


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